デジタル音源は点描?

試聴にいらっしゃる方と会話していても、やはり真空管アンプは艶と潤いがあっていいですね!と談笑することが多いです。トランジスタアンプは国内ではS社、A社の高級機、国外ではMC社、ML社製等のビンテージ品を聴いていた時期もありました。なぜ真空管アンプに帰着したかといいますと、デジタル音源でもデジタル臭さが少なく自然かつ豊かに聴こえ音楽が文字通り「楽しめる」からです。レコードがCDに替わっていったのは1980年頃からですが、最初にCDを聴いた時はスクラッチノイズは無いが痩せた寂しい音、表層的の印象でした。この頃のCDはアナログ録音ベースで課題もありましたが、デジタルの方が絶対的に音が良いというのが通説であったのでびっくりしました。例えばYESのFRAGILEというアルバムも仲間は良い音で聴けるようになったと喜ぶ中、私はレコードの方が良いと発言して変な顔をされました。ビートルズのアビーロードがCD化された時も買い直したファンが多かったのですが、やはり特段の発見はありませんでした。スペック的には高域が20kHzで切られていることが原因と問題視され、SACDやハイレゾ音源の登場で改善されてきていますがそれだけではありません。デジタル音源は周波数と音量を時間分割して0,1の信号に置き換えているのですからイメージとしてはスーラの点描画ですね。さしずめ色は周波数、明るさは音量でしょうか。有名な「グランドジャッドの日曜日」は美術の教科書にも出ている代表作ですが、絵の具を色の点として扱い点の集まりで絵を構成しています。この点を十分に小さくしていけば(サンプリング周波数を高くしていけば)自然に近くなりますが限界があります。またデジタルノイズには種々の要因があります。例えばプロ用CDプレイヤーは読取時のエラーレートがリアルタイムで表示されるものがありますが通常高々70~80%程度です。CDは音楽データをリアルタイムで再生する時間制約があるため読み切れなかったデータはメーカー毎にソフトを工夫して補完していますが完璧ではありません。先のスーラの絵で言えば点描が正確に再現されず乱れて細かいジグソーパズルのズレの様な状態のイメージでしょうか?それなりに色や絵柄は再生されているのですがオリジナルからは変質してしまいます。アナログノイズはスクラッチや高域、低域の減衰などですから絵でいえば表面にすり傷や色褪せなどで人間が感覚的に補正して聴ける面がありますが、デジタルノイズは感覚的には補正できないのでやっかいです。真空管アンプはアナログ時代の産物ですが、このようなデジタルノイズにも有効です。真空管アンプは楽器と同様に偶数次の倍音成分が多い特徴があり、デジタルノイズに含まれる奇数次の倍音を目立たなくする効果があると考えられます。また回路構成上欠かせないアウトプットトランスも効果的です。大変便利で高スペックなデジタル技術ですが、その恩恵に預かりながら真空管アンプで豊かでリアルな音楽を楽しみましょう。

コメント: 0 (ディスカッションは終了しました。)
    まだコメントはありません。